2012年7月31日火曜日

Social selection and peer influence in an online social network.

Lewis, K., Gonzalez, M., & Kaufman, J. (2012). Social selection and peer influence in an online social network. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 109(1), 68-72. doi:10.1073/pnas.1109739109

Internet, online social network, peer influence, coevolution


ヘッドライン:人はよく似た他者と親密になるのか?そしてかれらは時間経過と共に似てくるのか?という長らく解き明かされてこなかった社会科学最大の謎(笑 を,大学生のFB利用に関するコホート分析によって検討した.分かったことは以下の2点―(1)音楽や映画の趣味を共有していると友達になりやすく,本の趣味だとそうはならない,(2)クラシックやジャズの趣味以外で,FB友達間で趣味が「拡散」することはない.つまりオンラインのソーシャルネットワークは他者に影響を及ぼすツールではなく,「よく似た他者とより親密になる」ツールなのである.


コメント:このデータはアメリカの大学生×FB利用者を対象としたもの.あちらの大学生はほぼ全員FBに加入していることに加えて,この研究のサンプルでも大学のアドレスで利用していないアカウントはわずかに2.6%しかいなかったそう.そんな現実世界とバリバリに融合しているSNSで「今までなかったようなことが起きる」と想像する方が不思議じゃないだろうか.

2012年7月30日月曜日

Disclosing information about the self is intrinsically rewarding.

Tamir, D. I., & Mitchell, J. P. (2012). Disclosing information about the self is intrinsically rewarding. Proceedings of the National Academy of Sciences, 2012. doi:10.1073/pnas.1202129109

self-reference, social cognition, reward, functional MRI

ヘッドライン:SNSには自分語りが溢れている.人間はなぜこんなに自己開示(自分についてありのままを他者に語る)ことが好きなのか.それは報酬系と関連しているからだ!ということを6つの実験から検証したもの.自己開示をしている時は報酬系が賦活している→自己開示には内発的価値があるということだ!

コメント:★丹野さんコメント.この論文の「面白み」は何なのか.みなが好んでする行動(ここでは自己の情報の開示や共有)が遂行される際に報酬系が賦活するのはむしろ「当たり前」であって,だからどうしたという気がする.例えばタイトルが「Drinking alcohols…やSmoking cigarettes…」に変えたら面白いか?ということ.逆に賦活していない方が面白い.じゃあなぜするの?という話になるから.それに,アメリカ人にとってこうした行動は社会的に学習されたものであって本当にintrinsicなのかという点も気になった.★小川さんコメント.他者に自分の情報を提供する方向だけではなく,他者からその人自身の情報を聞くことについても検討すると面白そう.ソーシャルメディアはまさにそうだよね.(三浦)

Visual attention and the acquisition of information in human crowds.



Gallup, A. C., Hale, J. J., Sumpter, D. J. T., Garnier, S., Kacelnik, A., Krebs, J. R., & Couzin, I. D. (2012). Visual attention and the acquisition of information in human crowds. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 109(19), 7245-50. doi:10.1073/pnas.1116141109

behavioral contagion, joint visual attention, social influence, vigilance

ヘッドライン:人混みの中で誰かが何かを見ているとつい同調してしまう.それが人間というものである.この知見を実証したMilgram(1969)の印象的な研究を追試し,さらには人の流れやそれぞれの視線の向きなど詳細な情報を付け加えて深化させた研究.どこかを見上げている人の後ろにいる人々がよく追従していることが示された.

コメント:現代ならミルグラムの実験をこんだけ充実させてやれるぜ,という凝った研究だが,分かったことは大したことない… ミルグラムの研究はロストレターテクニックや服従実験などもよく追試されていて,さすがだなと思います.(三浦)